戦場カメラマンの実話マンガ「フォトグラフ」

マナコ先生からの一言。
「せっかくの夏休み、
ずっしり重く心にびりびりひびく本を読んでみないか?
みんなが知ってるマンガとはぜんぜん違う、
フランス製のマンガだ。
事典みたいにデカくて重いから要注意だ!
漢字にルビがないから小学生には難しいぞ」

表紙

 

 

 

 

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『フォトグラフ』
エマニュエル・ギベール 小学館集英社プロダクション

フランスのマンガをはじめて読む人は、
「字がちっさ!」「フキダシが少ない」「左から右?」
と、いろいろ、とまどうことが多いと思う。

だけど、少しガマンして読み進めてみて欲しい。

これは、戦場カメラマンが、戦場で撮ってきた白黒写真に、
マンガ家がカラーイラストを書き加えてできたマンガだ。
主人公のカメラマンと、マンガ家の共作と言ってもいい。
ページによっては写真のほうが多いし、
写真だけのページもある。

もちろん、書かれていることは、ぜんぶ実話。

戦場カメラマンが、
母親に別れを告げ、飛行機に乗って出発するところから、
物語ははじまる。

はじめ、ストーリーの展開はゆっくりだ。
国境なき医師団(MSF)のメンバーと合流して
紛争のまっただなかの、アフガニスタンに向かう。

険しい山越え。
満身創痍で倒れる馬。
ようやく着いたアフガニスタンの病院は
掘っ立て小屋で薬も機材もたりない。
次々に運ばれてくる兵士たち。
そのころには、もうページをめくる手が止められなくなっている。

かっこいいのは、女性リーダーのジュリエット。
したたかな交渉術で、たくましく難事を乗り切る強さと、
幼子の死に涙する優しさの両方を持つ女性だ。

そして医師レジスの言葉が心に残る。
「おれは進歩ってとてもいいことだと思ってる。スキャナーみたいな、
高性能の機材を使っての検査…そういうのがあって本当によかったと思う。
でもそういうものがない時は、ないなりにやるんだ。
すると、患者に対して注意深くなる」
このレジスが、主人公のカメラマンに言う言葉がまたいい。
「いい写真を撮るためには、いい歳のとり方を
しなくてはならない。
(中略)(それは)熟成とまったく同じだ。熟成、すなわちワインだよ。
だからおれはワインを作らなきゃならないんだ。
きみが言ったことすべてがワインにはある。
おまけにワインは飲むことができて、
とても美味い」
実際に、国境なき医師団の活動を終えたレジスは、
フランスでブドウ園をはじめたのだ。

事実の重みに圧倒される。
日本の読者にとっては、遠い国、アフガニスタン。
そこで生きる、子ども達、少年兵士、
さぼってばかりの荷物持ちや、悪徳警官。
生まれ、そして死んでいく人々、馬、羊……。
写真から息づかいが伝わってくる。
旅の後半、死の瀬戸際で
最後の光景を残しておきたいとシャッターを切った写真は、
圧巻だ。

迫真の写真をはさみつつ、
クールで、ときにシニカルなイラストが、
旅への期待、不安、いらだち、孤独、希望を
リアルに描いている。

読み終わったとき、
言葉にできないくらい大きくて重い何かを感じているはずだ。

中学生や高校生のときに読んでいたら、
人生が変わるかもしれない、
そんな力を持つ、マンガだ。

高価な本だから
図書館で借りて読んでもいい。
なかったら、リクエストしてみよう。
図書館関係者はぜひ、購入を検討してほしい。

 

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この記事を書いた人

「フリースクールの先生をしてる、マナコだ!
28歳! 独身! 男!
言いたいことはひとつだけだ!
オレの生徒は、死なせない!
なにがあっても! 絶対に!
君ももちろん、オレの大事な生徒だ!」

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