むかしむかし、あるところに。
正しく正直に生きる人がいたんだ。
いろんな人が彼に話しかける。
「○○は、△△だね」
でもそれが間違っていることも多い。
彼は、いちいち、
「それは間違っています。正しくは○○は□□です」
と、正していたんだ。
そうするうちに、みんな、彼に話しかけなくなった。
正しくあることは大事かもしれない。
でも、誰だって、しょっぱなから否定されたら楽しくないからね。
いつのまにか、彼はひとりぼっちになってしまった。
ある日、ひさしぶりに、小さな子が、彼に話しかけた。
「○○は△△だよね」
それは間違っていた。間違っていたけれど、彼は話しかけてくれたことが嬉しかった。
だから。
「教えてくれてありがとう。きみはそう思ったんだね。そのアイデアもいいけれど、□□ならもっと早くできるよ」
と、相手を否定しないように、気をつけながら答えたら、子どもはパッと顔を輝かせた。
「そっか!それはいいね!」
彼はやっぱり、間違いを間違いのままにしておくことはできなかった。
でも、言い方を工夫しようって思ったんだ。
それからはまた、いろんな人が彼に話しかけてくれるようになったそうだよ。
そんなむかしむかしのお話。