不登校だった橘亜月さん(翻訳家)の体験

不登校パワー「あいあぽろざいじゅーさー」

橘 亜月

こんにちは、このサイトの技術を担当してますアツキです。今日は私の体験をお話したいと思います。
中学一年の二学期末ごろからだったでしょうか。私の不登校は始まりました。
私が学校に行かなくなった原因は、今思えば些細な問題でした。何かと私にちょっかいを出してくる男子がいて、彼に会いたくなくて。また、数学教師に完全に無視されており、授業後に質問に行ったところ、けんもほろろに追い返された経験がきっかけでした。

学校に行けなくなり、食事も摂れなくなり、体重は激減。体力的にもギリギリのところにいました。
学校に行かなければ、時間はけっこうあるわけで、その時期、私はテレビで放送されるハリウッド映画を観まくりました。我が家のビデオは、バイリンガルにできず、モノラル録音(外国語か日本語のどちらかしか録音できない)しかできず、私が教材とした映画のビデオは、字幕のない英語だけが流れるものとなりました。

そりゃ、最初から聞いても、何を言っているのかわかりません。何度も何度も聞いて、「こういう場合は、こういう言い方をするのか」と、まるで赤ん坊が言葉を覚えていくような、じれったいやり方でした。でも、映画は言葉の意味はわからなくても、アクションあり、美しい男女のキスシーンあり、ハラハラドキドキしながら、内容がわかるようになるまで、飽きもせずに観ていたものです。

当時の私は13歳。人間の一生で一番、脳が活発で頭に入る時期でした。中学生って、人生で一番頭が良いのですよ! 歳取って、同じようにはいかないと思います。ある意味、何かにのめり込むのに、最適な時期なんです。

私はサスペンスの巨匠、ヒッチコックの映画が好きでした。言葉がわからなくても、いろいろ場面転換があり、スリルもあり、最後まで観るのが楽しったんです。ビデオに撮って、それこそ擦り切れるまで見ました。意味が分からず見始めるには、最適な教材でした。

そんなある日、私たち家族は大きなホテルに一泊することになりました。
その夜、私は一人でガラス天井が売りのプールに入りました。星を見ながら背泳ぎして、優雅な気分を味わった後、着替えをするため更衣室に入りました。ところがそこが男子用更衣室で、外国人の男性が一人いて、私を見て声を荒げました。

0-27「This is a men’s room! This is a men’s room!」

裸を見られて恥ずかしかったのか、男性はたいそう怒っておられました。それに対し、私は、ヒッチコック映画で部下が上司に謝る時に使っていた言葉を使ったんです。

「あいあぽろざいじゅーさー!」

意味なんて、わかっちゃいません。単語のつづりも知りません。
でも男性の目は驚きに開かれ、「アイムソーリー」でも「エクスキューズミー」でもなく「I apologize you, sir!(申し訳ありません、閣下!)」と謝った私を笑って許してくれたのです。

その後着替えを終えると、何と男性もエレベーターを待っていました。男性は私を見て嬉しそうに話しかけてくれて、私も必死に返しました。その時が外国人と話をした初めての経験で、自分が英語で話ができると知ったのです。

そして私は今、英語を使った仕事をしています。頭が一番柔らかく、時間がたっぷりあったあの時期、意味が分かるようになるまで字幕のない映画を観まくった結果です。

今、学校に行けない貴方。今の貴方は人生で一番頭が良く、時間もたっぷりあります。何かをマスターするのに大きなチャンスなんです。
どうか今という時間を無駄にしないでください。学校に行かない時間をどう使うかで、生きる上で大きな宝物を得ることができるんです。

私に冷たくした数学教師を見返すため、参考書をベッドまで持ち込んで読みふけり、不登校前より成績が上がったのは、また、別の話。

 

終わり

橘亜月さんの人形4コマ連載はこちら↓
fuukobanner2

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この記事を書いた人

「フリースクールの先生をしてる、マナコだ!
28歳! 独身! 男!
言いたいことはひとつだけだ!
オレの生徒は、死なせない!
なにがあっても! 絶対に!
君ももちろん、オレの大事な生徒だ!」

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