いじめサバイバー長野峻也さん(武術家)の体験その3

私のイジメ体験その3「武術修業の本当の理由」
長野峻也(しゅんや)

もちろん、それからもいろんな暴力的な経験はありましたし、いくつかの道場にかよってイジメみたいなあつかいを受けたこともありましたが、その時には、私はもう昔のような気持ちになることもなく、「こういうのは試練というヤツだよな~」と、さして動じることもありませんでした。
何年か前に、教えていた弟子に自分の経験を話して聞かせていたら、「先生はよく、生きてこれましたね~? ふつうの人間だったら自殺するか、心の病気になるかしますよ」と、感心するよりあきれたという顔で感想をいっていました。
長く武術を続けてきて良かったことは、心が折れないということかもしれませんね。
もともと、私が特別強い心の持ち主だったとは思えませんから、やはり、武術を修行してきた結果なのでしょう。

けれども、以前にも書いたと思いますが、武道で黒帯を取るくらいのことは、マジメに道場にかよっていれば一年から三年くらいで、たいていの人は取れます。
しかし、そのていどでほんとうに身を護るような実力になれるものではありません。
殴り合いのケンカを一度もやったことのない人が、いきなりやろうとしてもできるものじゃありません。
まして、果物ナイフ一本もっている人間を素手でかくじつに倒せるような武道家は、そうそういるものではないのです。
逆にいうと、ナイフ一本もてば、人間の戦闘能力は素手の時よりずっと大きくなる。
だから、刃物をもっている”あぶないヤツ”に素手で立ち向かうのは自殺行為です。
これだけは、よくおぼえておいてください!

イジメを受けている人は、ガマンできるのならガマンするのも悪いやり方ではないと思います。
中学時代の私も、けっきょくはガマンしたのです。長い人生では、それがプラスになりました。そういう場合も、自分の意志によっては可能になります。
ですが、ガマンできないような暴力的イジメに悩んでいるなら、プライドなんか捨てて、親や先生や友達に相談してください。
聞いてくれないかもしれませんが、あきらめずに相談することを続けてください。
このサイトも、そのために開設されたのでしょう。

私は、武術を練習することが希望になったから、乗り越えられました。が、暴力をふるう人間に暴力はいけないことだと教えてやることが本当は一番大切です。
たいていの場合、暴力をふるう者は、自分の感情をおさえられない幼稚な人間です。
家庭に問題がある人も多い。
あるいは、何か病気で感情をコントロールできない人もいます。
相手がどういう気持ちでやっているのか?を考えて、被害を受けないための有効な対策を考えなければなりません。
ですが、手っ取り早いやり方をひとつ教えましょう。
武道や武術、格闘技を習うことです。
そして、先輩や先生に相談することです。
武道や武術、格闘技を教えている人には、私のようにイジメを体験してはじめた人が少なくありません。
だから、親身(しんみ)に相談に乗ってくれ、「カワイイ後輩や弟子に危害をくわえるようなヤツはぶちのめしてやる!」と積極的に対策を考えてくれたりもする。
言葉は悪いですが、彼らは暴力の専門家です。多少のイジメに動じるような心の弱い人はいない”はず”です。
“はず”というのは、たまに間違って武術の道場を開いてしまったような人間もいたりするからですが、まず、見学して道場の雰囲気や先生の人柄、生徒の実力とか確認してから入門することをおすすめします。
私が剣道部で体験したような、逆効果になってしまう場合も、ないとはいえません。
武道や武術、格闘技をやっている人間は、どんな優しい顔をしていても、いざとなったら人間をひねり潰すのをためらわない性格の人が多いので、「俺の生徒に手を出すな~」という地獄先生ぬ~べ~みたいな人をえらばないといけません。
私の体験は、悪口をネットで流されるとか、シカトされるとか嫌がらせされるとかいう話ではありませんが、実は、そういうことも無数にやられています。
しかし、そんなものは命にかかわるものじゃないから、気にする必要がありません。
そういえば、大学にいっていた頃、イジメをやっていた連中を止めたことがありましたが、今度は私をターゲットにしてきました。
でも、その頃には腕に自信があったので、嫌がらせされてもニヤニヤ笑って見ていました。ボクシングやっていたヤツをわざと挑発(ちょうはつ)しておいて、ズルい技でやっつけました。
すると、イジメをあおっていたヤツが頭を下げてきました。自分が恥ずかしくなったんだそうです。

私は特殊な例だといわれるんですが、「イジメに負けない」という気持ちと、具体的に「武術」を修行したという二つの要素で変われたんですね。
他人を変えることは難しいですが、自分ならその気になればいくらでも変えられます。
今、自殺したいくらいイジメに悩んでいる人も、自分が変われば必ず脱出できますよ。
そして、脱出できた時に、「あ~、あの体験もムダじゃなかったんだ」と気づくと思います。

もし、痛みという感覚が無かったら、私たちは病気や怪我に気づかず、手遅れになって死んでしまうでしょう?
自分が痛みを知っているから、他人の痛みを察することもできるでしょう?
平気で他人をイジメる人には、「痛みを知らない」からなのと、「自分が痛過ぎるから他人をイジメて自分の痛みをやわらげたい」の二つあります。
二番目の理由の人だと、一種の「助けてコール」なんですね。
イジメられっ子がイジメっ子になったりすることってあるじゃないですか?
心が弱いから、そうなっちゃうんですよ。
心が弱いままでイジメ対策をやっても、根本的な解決にはつながらないと私は思いますね。
イジメやっている相手に、「あなたは、本来、こんなことする人間じゃないと思うんだけど?」って、問い返してみたら、どうでしょうね?
(おわり)

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この記事を書いた人

「フリースクールの先生をしてる、マナコだ!
28歳! 独身! 男!
言いたいことはひとつだけだ!
オレの生徒は、死なせない!
なにがあっても! 絶対に!
君ももちろん、オレの大事な生徒だ!」

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